【カンプノウの相棒】神の子の隣は泣き所。"あの"ポジションの候補生達。
これほどまったく試合がないというのも珍しい。
まず試合が無い、といって浮かぶのはシーズン終了から開幕までの休暇~プレシーズン期間があげられるが、
トップスター達には毎年EUROやらコパやらオリンピックやらW杯やらがあるし、
終わったら終わったで、登録メンバー当落線上の崖っぷちの選手や移籍直後のニューカマーが開幕スタメンの座をかけてプレシーズンマッチに挑む。
日本へと去ったイニエスタ。
そして栄光の背番号8を継いだグレミオからの刺客、アルトゥール・メロ。
彼がデビュー戦でトッテナムゴールに突き刺した鮮烈なミドルシュートに、開幕前とは思えないほど興奮を覚えたのは記憶に新しい。
次に試合がない期間として挙げられるのは正月にかけてのクリスマス休暇だろうか。
とは言ってもこちらは選手を過密日程から少し解放すると同時に、新年早々カップ戦とリーグ勝負所の週2試合、月が変わってCL決勝トーナメントと超ハイスピードスケジュールに向けた、観る側としても箸休めのような役割も担っていた。
そして今。
ピッチでは輝かしい活躍を魅せる選手たちが次々とインスタに家族写真やトレーニング風景を並べファンを喜ばせる中、
アルトゥーロ・ビダルは壁に蹴って返ってきたボールをそのままバスケットゴールに3Pシュートという、コンセプト不明の謎ハイブリットアピール。
プレミアリーグをはじめとする各クラブの公式ツイッターでは選手たちがeSportsに興じ、
配信サービスDAZNは、ドキュメンタリーと過去の名試合や特集でなんとかつないでいる状況。
ふと眺めていると08-09シーズンと10-11シーズンのCL決勝。
バルセロナVSマンチェスターUという同一カードで行われた二試合が特集で配信されていた。
08-09。
ロナウジーニョから背番号10を受け継いだメッシが初めて挑むビッグイヤー獲得のミッション。
その隣にいるのはメッシの最初の『相棒』、サミュエル・エトーだった。
シャビのチップクロスから、伝説のヘディングシュートを押し込んだメッシが、最初のビッグイヤーを手にすることになる。
そして10-11。
文字通りチームの『中心』に君臨した偽9番のメッシ。
エストレーモとして最前列に陣取ったダビド・ビジャとペドロ・ロドリゲスがDFラインを押し下げ、シャビとイニエスタは絶妙な角度で三角関係を形成し続けた。
メッシを中心に流動的に移り変わるポジショニング。陣形が崩れることによるカウンターのリスクをブスケツが一つ一つ丁寧に潰していく。
相手のハイプレスを交わして確実にショートパスをトライアングルにつなぐ為、グァルディオラが選んだ最終ラインはピケと、歳を重ねた闘将プジョルではなく、元来MFのハビエル・マスチェラーノだった。
この時期のメッシに『相棒』はいないと考えるのが適切だ。
すべてをメッシ中心に構成されたこのチームにおいて、あえて表現するならメッシの相棒は"グァルディオラ"であり、さらに言い換えるなら"メッシ以外の10人"ともいえるだろう。
この半年後にオールド・トラッフォードのスタンド名にまでなる敵将アレックス・ファーガソンをもってして、「現時点で欧州最高のチーム」「魅了された」とまで言ったが、
"エース"メッシの活躍でマンチェスターUを破った08-09シーズンからの2年で、
バルセロナが『メッシ依存』という永遠の課題を取り返しのつかないレベルで膨れ上がらせたことは誰の目にも明確だった。
06-07シーズンに本格的にトップチームに定着して以来、
メッシを活かし、
メッシに活かされ、
メッシの”邪魔をしない”
ことが求められるメッシの『相棒』という特殊なポジションは、数多くの一流選手たちが務めてきた。
古くはエトーに始まり、
今年38歳にして欧州に舞い戻った超人、ズラタン・イブラヒモビッチは当時1シーズンでチームを去った。
日本の地で負った怪我で、泣く泣くその地位を手放したビジャ。
脇役どまりだったペドロ、アレクシス・サンチェス、セスク・ファブレガス。
そしてサッカーファンに多くの夢を見せたネイマール、ルイス・スアレス。
今シーズン。
32歳となったメッシの相棒を務めていたのは相棒6年目となる現在33歳のスアレスだ。
シャビもイニエスタも去って、さらにメッシ依存を強めるバルセロナ。
CL優勝こそないものの最低限の成績を残し続けていられるのは、メッシの前を常に奔走し、負担を軽減し続ける彼の功績だといっても過言はないだろう。
しかし、ファンや首脳のみならず、本人までもが散々口にしてきた「9番の代役不在」という5年来の爆弾が、今年1月ついに爆発した。
右膝、半月板損傷。
ネイマールがフランスへ去ってからというものの、たった一人でメッシの相棒を努め続けてきたスアレスの膝がついに悲鳴をあげた。
移籍期間である1月の離脱だったことが不幸中の幸いだったはずが、代役の確保には至らなかった上にアベル・ルイスやカルレス・ペレスといった若手FWを不可解なバーゲンセール。
そして2月。
恒例、デンベレの負傷離脱でジ・エンド。
FW登録選手が17歳のアンス・ファティ含めた3人のみという全体未聞の危機に、ラ・リーガの特例で降格争い中のレガネスからマーティン・ブライスワイトを1800万ユーロで強奪。
悲しい哉ハビエル・アギーレ。
忘れもしない悲運の解任劇に泣かされた元日本代表監督が、今度はスペインの地でまた泣いている。
バルセロナに話を戻そう。
誰がどう見てもハチャメチャの人事。
10-11シーズンのCL優勝を決めた際スタメンでピッチに立ち、肝臓癌克服の象徴としてビッグイヤーまで掲げた現SDエリック・アビダルが公然とメッシに批判されるというカオス。
繰り返すが根本的な問題はメッシ依存だ。
ただ、メッシに追いつきそして超えていく選手が現れない限り彼はエースであり続けるし、この問題は解決しない。
となると、やはり今早急に解決すべきは来季34歳のシーズンを迎えるスアレスの代役問題。
しかし、だ。
この問題、ただ「9番タイプでメッシにフィットする選手」を獲れば解決するというわけではない。
32歳になったメッシの『相棒』を務められる選手は、今後いても1人か2人程度だろう。
10年以上もの間バルセロナの中心として君臨し続けたメッシの最期を隣で見届け、そしてメッシからバルセロナを受け継ぐ選手でなければルイス・スアレスの後継者は務まらないのだ。
ドイツでは、ドルトムントの新怪物アーリング・ハーランドがデビュー戦ハットトリックに始まりリーグ戦8試合で9ゴール。
キリアン・ムバッペ、ジェイドン・サンチョの世代トップランナー争いに割って入った。
ティモ・ヴェルナーはリバプールと相思相愛との報道。
マンチェスターUのマーカス・ラッシュフォードも怪我からの復帰が近づくにつれチーム内で前向きな姿勢を見せはじめている。
若い世代のFWは才能が豊富だが残る候補はそう多くはない。
20歳でインテルの10番を背負った天才は今季セリエAで11ゴールを記録。CLグループステージでも開始3分でバルセロナのゴールを破っただけに、期待値は高い。
が、ただでさえ財政の苦しい状況にリーグ中断の影響もあり、あまり高額なオペレーションは期待できないだろう。
ロメル・ルカクとこのラウタロに継ぐFWが控えていないインテルが、そう簡単には手放さないはずだ。
PSVのドニエル・マレン。
アヤックスやアーセナルでもプレーを経験した99年生まれの21歳。今季ウィンガーからセンターフォワードにコンバートされると、貪欲にシュートを狙う姿勢から9月には1試合5ゴールを記録。味方を見つけるのも早く、自身を追い越した選手には積極的にスルーパスを出せる。
しかし1月に左膝を手術して今季絶望。夏に獲得したとして、来季開幕までに調整が間に合うのかどうか、不安要素は多い。
ただ、来季の開幕が遅れる可能性は十分にあるし、スアレスも夏頃には復帰の見込みであることから、障害は思ったより少ない。争奪戦の可能性を考えると、怪我の影響で市場価値が下がる可能性があることもプラスだろう。
ちなみに、
サンパウロのグスタボ・マイアと、ブラガのフランシスコ・トリンカンの獲得が決まっているが、ドリブラーやチャンスメイクタイプの選手。
メッシの相棒というよりは、逆サイドやバックアッパーとしての活躍が主戦場になりそうだ。
ラウタロか、
マレンか、
あるいはまだ見ぬ新星か。
メッシの隣に収まるのは、次代のバルセロナを、そしてサッカー界を背負って立つ新たなスターだ。
あのメッシの後を継ぐのだからムバッペでもハーランドでも、バロンドールを争えるようなビッグネームを獲ってくれと言いたいところだ。
が、あまりに突拍子もないのでそれはゲームの中だけにしておこうと思う。